ペーパーレス化の成功事例5選!進める手順とポイントも解説

古い慣習を続けている企業を象徴するもののひとつが紙の書類であり、なかなか従来のフローを捨てられないという企業は数多く存在します。そんななか、ペーパーレス化はコスト削減や業務効率化、またSDGsの観点からも注目されている取り組みです。しかし、いざ実践するとなると課題も少なくありません。 今回は、ペーパーレス化の成功事例や、スムーズに進めるための手順とポイントを解説します。


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ペーパーレス化を成功させた企業事例5選

ペーパーレス化は、企業にとってコスト削減や業務効率化に役立つ取り組みです。導入効果を十分に得るためには、自社の状況や課題に応じた方法で、紙からデジタルへシフトすることが大切です。ここでは、ペーパーレス化に成功した企業の具体的な課題解決事例を紹介します。

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株式会社ライフコーポレーション

株式会社ライフコーポレーションでは、毎月の店長会議で膨大な紙を使用しており、印刷費や人件費が課題でした。そこで、タブレット端末を用いたペーパーレス会議システムを導入することで、紙を使わずに資料を共有できるようにしました。

結果として、毎月6万枚分もの印刷コストを削減し、紙の資料を用意する時間・人件費もカットすることができました。

コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社

コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社の課題は、オフィス内の書類キャビネットがスペースを圧迫し、書類の管理にも手間がかかっていたことでした。そこで導入したのが、「ペーパーストックレス」(フリーアドレス制と文書を紙媒体で保存しないようにする取り組み)です。各自が机に書類や私物を置かない仕組みとし、共有の資料も限られたファイルキャビネットの容量を上限としました。

その結果、ファイルキャビネット約56台分(東京タワー約1本分)もの書類削減に成功したそうです。ファイルキャビネット廃止で生まれたスペースは、会議室、ミーティングスペースになりました。結果としてコミュニケーションやアイデア創出の活性化にもつながったとのことです。

三菱商事パッケージング株式会社

三菱商事パッケージング株式会社は、社内の申請手続きが煩雑で、多くの時間と労力を要していました。そこで、ワークフローシステムを導入し、稟議書や申請書をデジタル化しました。

結果として申請業務がスピーディーになり、年間で700時間以上の業務時間を削減するなど、大きな成果を得られたようです。

株式会社電通ランウェイ

株式会社電通ランウェイの悩みは、紙での手続きが多く、テレワークに移行しづらいことでした。また、メールでの情報共有では行き届かない場面も多く、業務が非効率になっていました。そこで実施したのが、掲示板やワークフロー、文書管理機能が一体となったツールの導入です。結果、手続きが簡素化され、問い合わせ対応がスムーズになりました。

また、テレワーク環境でも円滑に業務が進められるようになり、柔軟な働き方の実現にもつながったようです。

株式会社鈴花商事

着物を中心とした女性ファッションの店舗を展開する株式会社鈴花商事には、従来の電話やFAX、書面による情報伝達に時間がかかり、情報の行き違いが生じやすいという問題がありました。従業員には年配の方も多く、ITツールの導入が難しい状況でしたが、使いやすいチャットツールを導入し、ペーパーレス化を推進しました。

コミュニケーションのスピードと質が向上したことで、商品発送ミスなどのトラブルも起こりにくくなったそうです。

ペーパーレス化を進める際のよくある課題とポイント

ペーパーレス化はSDGs実現、DX化、業務効率化など、さまざまな取り組みの一環として、多くの企業が注目しています。しかし、実際の導入においては課題が発生しやすく、簡単には成し遂げられないのも事実です。ここでは、よく見られる課題とその対策について解説します。

従業員によってはデジタルツールを使いこなせない場合がある

ペーパーレス化においては、デジタル化に慣れていない従業員がツールや端末を十分に使いこなせない可能性があります。特に、紙での業務が中心であった企業では、新しいツールの導入に抵抗を感じる従業員も少なくありません。

導入の際は、下記のポイントを考慮しましょう。

分かりやすく、使いやすいツールを選ぶことが重要です。複雑な操作が少なく、直感的に使えるツールを採用することで、導入時の混乱を軽減できます。

ヘルプデスクの設置やマニュアルを用意することで、質問がある場合やトラブルが発生した際に迅速に対応できる体制を整えます。従業員の安心感が向上し、スムーズな導入が期待できます。

組織に浸透しない

ペーパーレス化のメリットが従業員に十分に伝わっていないと、積極的な行動につながらず、組織全体への浸透が難しくなります。業務の効率化や作業負担の軽減などの目的が理解されなければ、従業員は新しい仕組みの必要性を感じにくくなります。

導入の際は、下記のポイントを考慮しましょう。

ペーパーレス化の目的やメリットを明確に周知することが大切です。例えば、時間短縮やコスト削減、環境への貢献といった実際のメリットを示すことで、導入の意義が伝わりやすくなります。

・特に「業務の効率化が図られることで、最終的に従業員の負担も軽減される」点を伝えると、ポジティブな反応が得られやすいでしょう。

従業員に大きな負担がかかる

既存のルールや業務フローからペーパーレス化を進める際、従業員にとっては新しい操作や業務の流れを覚える必要があり、負担がかかりやすくなります。特に、慣れるまではマニュアルを参照しながら操作する必要があり、時にはミスが発生することも考えられます。

導入の際は、下記のポイントを考慮しましょう。

ペーパーレス化を段階的に進めることで、従業員の負担を軽減できます。まずは特定の書類からペーパーレス化を開始し、徐々に範囲を広げる方法が有効です。

特定の部署での導入を先行させることで、実際の運用を通じて課題を発見し、改善する時間を確保できます。段階的なアプローチにより、従業員が少しずつ新しい業務フローに慣れていける環境を整えられます。

ペーパーレス化を進める手順

最後に、ペーパーレス化を適切に進めるための手順を解説します。

ステップ1|課題と目的の明確化

まずは、何が課題で、どのような目的でペーパーレス化を進めるのかを明確にすることが重要です。課題を正確に把握することで、適切な施策が変わってきます。

例えば、紙の保管コストや情報共有のスピードが問題であれば、それらを具体的な解決目標として設定します。目的が明確になると、従業員全員が同じ方向に向かって取り組むことが可能です。

ステップ2|データ化する書類の選定

次に、データ化する書類を選びましょう。データ化する対象は、紙として保管しなくても問題がない書類や、頻繁に印刷している書類とすることが基本です。

その後、必要に応じて既存の書類の一部を廃棄し、データ化を進めます。分類をしっかり行うことで、効率的なペーパーレス化が実現できます。

ステップ3|適切なツールやサービスの検討

紙の書類をデータ化するためのツールやサービスを検討しましょう。具体的には、スキャナーやAI-OCR(※)などがあります。

また、デジタル化された情報をどのように社内で共有するかも事前に決めておくことで、後の運用がスムーズになります。

※AI-OCR…PDFや画像に書かれている文字列をデジタルテキスト化する技術のこと。AIによって精度が飛躍的に向上している分野。

ステップ4|ペーパーレス化の運用ルールの決定

新しい運用には、明確なルールの設定が欠かせません。マニュアルの作成や、利用してはならないツール・データの保管方法などの禁止事項を決めることで、従業員の混乱を防ぎ、統一的な取り組みが実現します。

ルールが明確であれば、全社的なペーパーレス化への参加意識も高まります。

ステップ5|周知と実行

運用ルールが整ったら、従業員への周知と実行段階です。説明会の開催やマニュアルの配布を通じて、ルールの理解を深め、不明点についてはサポートを行います。

従業員が安心してペーパーレス化に取り組めるようにすることが重要です。

ステップ6|結果の可視化

ペーパーレス化の効果を把握するためには、モニタリングも欠かせません。例えば、複合機の使用量や印刷用紙の削減量、残業時間や工数の減少といった具体的な数値で成果を確認し、全体に共有します。

結果が可視化されることで、ペーパーレス化の導入成果を実感でき、さらなる改善への意欲が高まります。

まとめ

ペーパーレス化は、コスト削減や業務効率化などメリットの多い取り組みです。しかし、いざ実行する際には、従業員のツールの使い方や組織全体への浸透といった多くの課題に直面することになるでしょう。

ペーパーレス化を成功させるには、最初に課題と目的を明確にし、段階的に進めることがポイントです。また、運用ルールを定め、全社での理解を促進することが大切です。さらに、結果を数値化して可視化することで、成功の実感が生まれ、継続的な改善が図れます。

今回紹介した手順とポイント、他社事例を参考に、ペーパーレス化を推進していきましょう。

※この記事は、2024年11月時点の情報に基づいて作成しています。