製造業におけるAIの導入事例10選
まずは、製造業におけるAIの導入事例を紹介します。企業ごとの課題や実際の成果を通じて、AI導入の効果を具体的にイメージしましょう。
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株式会社日本触媒|生産計画の最適化システムで工数が10分の1に
株式会社日本触媒では、高吸水性樹脂(SAP)の生産計画作成にAIを活用しています。従来は、多様な顧客ニーズに対応するための生産計画に多大な労力を要していましたが、新システムにAIを導入したことにより、年間計画の作成時間が10分の1に短縮されました。計画の精度が高まったことで、供給安定にもつながってるようです。
富士通株式会社|生成AIによってサポートデスクの工数が8割減
富士通株式会社では生成系AIを導入し、カスタマーサービスでの問い合わせ対応にかかる工数を8割削減しました。社内に蓄積されたナレッジをAIに学習させることで、対応の精度も向上したようです。ナレッジは継続的に修正・加筆しながら、AIの精度向上を図っています。
キング醸造株式会社|需要予測で在庫過多や欠品を解消
キング醸造株式会社では、出荷予測においてノーコード予測AIツールを導入し、在庫過多や欠品の課題に対処しました。社内システムのデータを活用した高精度な予測により、業務に即した出荷予測が実現しています。これまで要していた手間や時間も大幅に削減されたそうです。
東京エレクトロン株式会社|労災防止AIの活用で安全を確保
東京エレクトロン株式会社は、AIを活用して製造現場の安全性を向上させるシステムを開発しました。監視カメラの映像を解析し、危険な状況をリアルタイムで検知して音や光でアラートを発信する仕組みです。クラウドを経由しないため、セキュリティ管理が厳格な製造現場でも安心して使えるメリットもあります。
SOLIZE株式会社|「熟練暗黙知×AI」で不具合を予知検知
SOLIZE株式会社では、熟練エンジニアの暗黙知をAIに学習させ、3Dプリンターの不具合予測を自動化しました。これによって、属人化していた作業が削減され、エンジニアの工数削減が実現しました。また、全体的な造形品質の向上も実現したことで、顧客満足度の向上にもつながったそうです。
ナブテスコ株式会社|異常を検知して風力発電機の故障を回避
ナブテスコ株式会社は、AIによる風力発電機の異常検知システムを構築しました。過去のデータを基に異常を検出する仕組みを開発し、故障回避や設備の安定運用につなげるだけではなく、状態監視機器の開発や新規事業の立ち上げへと発展させています。
東洋エンジニアリング株式会社|AIで品質要因の損失コストを削減
東洋エンジニアリング株式会社では、熟練者の暗黙知をAIに学習させました。これにより、技術の属人化や着工後の手戻り、不適合の防止を実現しました。品質要因の損失コストを抑制でき、顧客満足度も高まっています。
株式会社バーチャルメカニクス・株式会社理経|VRで自動運転の実装実験
株式会社バーチャルメカニクスと株式会社理経は、VR(仮想現実)とAIを使った自動運転シミュレーションソフトを開発しました。このソフトは、実車によるテストにかかる時間・コスト・場所、危険性などの問題を排し、現実に近い環境のもと、安全なテストを可能にするものです。自動車メーカー以外の企業も導入可能で、技術進化の促進に寄与しています。
トヨタ自動車株式会社|AI開発を内製化できるプラットフォームの整備
トヨタ自動車株式会社は、専門知識がなくてもAI開発が可能な社内プラットフォームを構築しました。製造スタッフが必要とするAIを自ら開発できるようになったことで、製造現場でのAI活用が進展したそうです。具体的には、接着剤塗布の目視検査や射出成形機の異常検知などのAI化が実現しています。
株式会社スプレッド|作物を切るAIロボットの導入
株式会社スプレッドでは、AIを搭載した自動カットロボットを植物工場に導入しています。レタスの芯抜きなど、従来は多くの人手を必要としていた作業の完全自動化が達成されました。細かな作業をAIに任せることで、まだ食べられる部分の廃棄量も削減されたそうです。
製造業でAIを導入する際の注意点・ポイント
製造業においてAIの導入は、業務効率化や精度の向上につながるものの、初期段階から慎重な計画が必要です。次に、導入の際に考慮すべき主要な注意点と対策を解説します。
初期投資が必要
AI導入の初期段階では、設備やシステム構築においてコストが増加しがちです。長期的には人件費削減やコスト低減が期待できますが、導入初期には予算を確保する必要があります。また、AI導入によって業務プロセスが見直されるため、従業員の負担が一時的に増える可能性もあります。
そのため、AI導入を計画する際には段階的な導入計画を立て、特定の従業員に負担が偏らないよう調整することが重要です。
デジタル人材を確保する
AIを活用するためには、デジタル技術に精通した人材の確保が重要です。デジタル人材がいない場合、導入計画や優先順位の設定が困難となり、結果としてプロジェクトが停滞するリスクがあります。
デジタル人材の確保が難しい場合は、既存の社員を育成する方法もあります。社内で実務に精通している社員をデジタル人材として育てることで、業務効率化を進めつつ人材の定着も図れます。
セキュリティを強化する
生成系AIを導入する際には、セキュリティリスクへの対策が重要です。主なリスクとして、外部からの不正アクセスによる情報漏洩、内部利用者による機密情報の流出、さらには生成AIを利用した偽情報の拡散があげられます。
これらのリスクを軽減するには、意図しない情報漏洩や誤用のリスクを抑えることが大切です。企業内で生成系AI利用に関するガイドラインを整備し、従業員への教育を徹底しましょう。
そのほか、利用者の権限を厳格化し、パスワード管理を徹底することも重要です。加えて、利用者ごとにアクセス範囲を細かく設定し、不要なアクセスを防ぎましょう。
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製造業にAIを導入する手順
製造業でAIを導入する際は、目的の設定やデータ準備、適切なツールの選定から運用開始まで、スムーズに進めるための段階的なプロセスが重要です。
AIの導入を検討している企業様は、下記の手順を参考に導入スケジュールを計画すると良いでしょう。
1.AI導入の目的とニーズを明確にする
2.導入するAIの選定を行う
3.社内教育を行う
4.導入し、運用を開始する
まとめ
製造業におけるAIの導入は、生産効率や品質向上など多くの成果をもたらしています。初期コストや人材育成、セキュリティ強化といった課題もともないますが、計画的な導入と適切な運用で大きな業務改善が期待できます。まずは自社のニーズを明確にし、AI活用による変革を目指して、一歩踏み出しましょう。
※この記事は、2024年11月時点の情報に基づいて作成しています。