AIを活用したマニュアル作成の方法
AIを活用したマニュアル作成の方法は、生成系AIを活用する方法・マニュアル自動作成ツールを使う方法・音声認識AIを活用する方法の3つあります。それぞれ詳しく解説します。
生成系AIを活用する
マニュアル作成において、生成系AIは、ドラフトの生成と編集・校正、要約、翻訳作業に活用できます。
ドラフトとは、マニュアルの草稿のことです。対象者、適用範囲、制約条件など、細かな情報を生成系AIに指示することで、実用的なドラフトが生成できます。ただし、情報漏洩のリスクもあるため、機密情報や個人情報を含む情報の取り扱いには注意しましょう。
生成系AIはドラフト生成以外に、誤字脱字チェックや表記のゆれ、文章の要点の抽出、言語の翻訳によるマニュアルの多言語化などにも対応できます。
マニュアル自動作成ツールを使う
AIと連携したマニュアル作成に特化したツールを利用する方法です。マニュアル自動作成ツールでは、テンプレートに沿って操作することで、マニュアル作成業務を自動化できます。
簡単な操作でマニュアルを作成できるため、作業者ごとの精度や質のばらつきを防げる点がメリットです。また、作成工数の削減にも役立ちます。
音声認識AIを活用する
音声認識AIは、音声を認識してテキストに変換する技術です。口頭で伝える作業手順をデータ化できるため、作業工程を減らし、作業全体の手間や負担を軽減できます。
音声認識AIを使用する際の問題点は、口頭の説明を文字にするため、文書としての正確性に欠けることです。音声認識AIで出力されたデータを生成AIに読み込ませ、編集・校正を行うことでマニュアル作成の作業効率を向上させることができます。
AIを活用したマニュアル作成の手順
AIを活用したマニュアルの作成手順を6つのステップに分けて解説します。
1.作成するマニュアルの方針を明確にする
現場に沿ったマニュアルを作成するには、作成の方針を明確にすることが重要です。マニュアルを利用する対象者、利用シーン、マニュアルが適用される範囲、なぜ作成する必要があるのかをイメージして方針を固めます。
形式上のマニュアルを作成するのではなく、現場で活用されるマニュアルにすることを意識しましょう。マニュアルを組織の目標とリンクさせるには、企業のビジョンや戦略、価値観、中長期の目標と一致させることもポイントです。
2.情報を収集・整理する
マニュアル作成で重要なのは、誰が確認しても内容を理解できるように、必要な情報を網羅し、適切に説明できるようにすることです。
必要な情報を集めるためにも、なるべく多くの現場担当者にヒアリングすることを心がけます。マニュアルに載せるべき事項を漏らさないよう、関連する部署からも情報を収集し、全体像がつかめるようにしておきましょう。
しかし、収集した情報をまとめただけでは、わかりにくいマニュアルになってしまいます。収集した情報には優先順位を付けて整理し、マニュアル化する内容を精査します。
3.構成や目次を決める
必要な情報を精査した後は、マニュアルの構成作成に取り組みます。大きな項目から決定し、細かな項目を決めていくと組み立てやすいでしょう。
構成ができあがったら、目次を作成していきます。構成や目次の作成で意識したいポイントは、わかりやすさです。
構成や目次を具体的に決めることでテーマが細分化され、重要な情報の記載漏れがないかの確認にも役立ちます。
4.AIツールを選定し、導入する
使用するAIツールを決めて、マニュアルの作成作業に入ります。目次をもとに、詳細なテキストの作成や必要なコンテンツを配置しましょう。
マニュアルの利用者にわかりやすいように、テキストだけでなく、図や画像、動画を作成するのもおすすめです。
5.抜け漏れや言い回しを確認する
マニュアルを作成したら、運用前にチェックするようにしましょう。
生成系AIは便利な技術ですが、正確でない情報や不適切な表現、矛盾した文章を出力する場合があります。生成系AIにマニュアル作成をすべて委ねず、人の目で十分にチェックすることが必要です。言い回しに問題がないか、記載漏れや内容の重複がないかなどを確認しましょう。
6.マニュアルを試験導入する
完成したマニュアルを試験的に導入し、内容に問題がないか確認します。マニュアルを確認しながら業務を実行してもらうことで、現場の担当者に記載内容に抜けや問題がないか確認してもらいます。
意見や問題が発生したら、該当部分を修正しましょう。本格的に運用した後も、継続的に見直しを行い、マニュアルの精度を上げることが大切です。
AIを活用したマニュアル作成の注意点・ポイント
AIを活用したマニュアル作成には利点がありますが、注意点もあります。導入時には、下記で紹介するAI利用でのマニュアル作成の注意点とポイントを押さえておきましょう。
AIだけで作成が完結するわけではない
AIはマニュアル作成の負担軽減に役立ちますが、作成工程のすべてを完結させることはできません。
生成系AIは学習データをベースとする技術です。一般的な情報を再構成するのには役立ちますが、学習データにない新しい情報の生成はできません。最新の情報や企業独自の知識などには対応できない可能性があります。
事実とは異なる情報や不適切な表現にも注意が必要です。既存の情報をベースに作成されるため、意図しない情報や古い情報、事実でない情報が含まれることもあります。
AIを利用してマニュアルを作成する場合でも、必ず人によるチェックを行い、問題がないかを確認する必要があります。
コストが発生する
生成系AIは無料で提供されているものもありますが、利用できる機能は制限されていることが多くあります。ビジネスでAIを利用する場合、文字数や利用できる回数、生成速度の問題で、無料の範囲では十分に活用できない可能性があるでしょう。
精度の高いマニュアルを作成するなら、有料のツールを活用することをおすすめします。ただし、AIへの投資が必要かは、マニュアルの作成点数や利用する従業員の数を考慮し、中長期的な視野で検討しましょう。
情報漏洩の危険性がある
一般に公開されている生成系AIでは、再学習による情報漏洩のリスクに注意しましょう。入力した情報をAIが学習することで、ほかのユーザーに入力した情報が出力されてしまうリスクがあります。
情報漏洩を防ぐには、入力した情報を再学習しないセキュリティ機能が強化されたツールを利用するようにしましょう。専用の生成AIを開発して、従業員だけが利用できる環境を構築する方法もあります。
不適切な利用で情報を流出させないためにも、マニュアル作成に関与するメンバーのセキュリティについてのリテラシーを高める取り組みが重要です。
関連記事:「AIリスクに企業が講じるべき対策とは|生成系AIの利用・開発上のリスクを解説」
まとめ
生成系AIは、マニュアル作成において、ドラフトの生成や文章の校正などに役立ちます。効果的に活用することで、マニュアル作成の作業時間の軽減や多言語展開に役立つでしょう。
ただし、生成系AIに頼りすぎたマニュアル作成には問題点もあります。作成したマニュアルは人が必ずチェックするなど、AI活用のための体制を整備した上で導入を進めましょう。
※この記事は、2024年12月時点での情報です。