生成AIパスポートとは?
「生成AIパスポート」は、AIの基礎知識や安全にAIを活用するスキルの習得を通じて、生成系AIの利用リスクを予防する初心者向けの資格試験です。生成系AIの社会実装や産業の再構築を目指す「一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)」が実施しています。
この資格の特徴は、AIの実践スキルだけでなく、安全な利用に必要な基礎知識にあたるAIリテラシーを重視している点です。企業のコンプライアンスに関わる個人情報保護や著作権侵害などについても学び、業務における生成系AIの活用リスクに備えます。
試験に合格した従業員は、AIを安全に活用するための基礎知識を有した人材であることが証明されます。企業側は、生成AIパスポートを取得した従業員が増えることで、AI活用による業務効率化のみならず、情報漏洩や権利侵害などの利用リスクを企業全体で下げられる点がメリットです。
生成AIパスポートは、下記のような方法で企業のブランディング、採用者へのPR、ステークホルダーへのアピールにも活用されています。
・資格取得者数を掲載したプレスリリース
・資格取得支援を組み込んだ福利厚生
ビジネス利用における著作権侵害については、下記の記事で詳しく解説しています。
「AIが著作権を侵害するケースとは?ビジネス利用で知っておきたい注意点」
生成AIパスポートの難易度・合格率
生成AIパスポートの累計受験者数は5,629名、累計合格者数は4,322名で、累計合格率は76.78%と発表されています。2024年第2回生成AIパスポート試験では、受験者数2,985名のうち2,351名が合格しました。合格率は78.76%で、回を重ねるごとに微増しています。
合格率の観点で下記の資格と比較すると、生成AIパスポートの難易度はそれほど高くないと考えられるでしょう。
・ITパスポート:50%前後
・基本情報技術者:40%前後
ただし、AI関連の専門用語を含む広範な知識が出題されるため、何の対策もしなければ、生成系AIの使用経験が少ない方にとっては難易度が高いと感じる可能性もあります。
学習方法は、公式テキストや問題集による学習、対策講座の受講などが一般的です。初めて見る専門用語を調べたり、誤答を見直したりといった方法で確実に知識を身に付けましょう。実務で利用する場面を想定しながら学習を進めると、さらに効果的です。
生成AIパスポートの試験内容
続いて、生成AIパスポートの試験形式や試験内容の概要、申込方法などをみていきましょう。
試験形式と内容
試験はオンライン形式で実施されるため、場所を問わず、PC、スマートフォン、タブレットなどから受験できます。受験資格はなく、AIに興味関心のある方や、生成系AIのビジネス利用に不安がある方などが対象です。試験時間や問題数、費用は次の通りです。
試験時間:60分間
問題数:60問
受験費用:一般11,000円(税込)、学生5,500円(税込)
試験結果は、試験後1~2か月の間に会員ページで通知があり、合格すれば、合格証書が発行されます。下記は試験内容の概要(抜粋)です。
大項目 | 学習内容 |
AI(人工知能) | ・AIの定義
・AIに知能をもたらす仕組み ・AIの種類 ・AIの歴史 ・シンギュラリティなど |
生成AI
(ジェネレーティブAI) |
・生成モデルの種類と手法
・ChatGPTの仕組みと変遷など |
現在の生成AIの動向 | ・テキスト生成AI
・画像生成AI ・音楽生成AI ・音声生成AI ・動画生成AI ・ディープフェイク(深層偽造)技術の危険性など |
情報リテラシー・基本理念とAI社会原則 | ・インターネットリテラシー
・セキュリティとプライバシー ・生成AI活用における個人情報保護、知的財産権、肖像権とパブリシティ権、不正競争防止法 ・AI社会の基本理念 ・AI社会原則 ・AI利活用原則の基本理念など |
テキスト生成AIのプロンプト制作と実例 | ・LMとLLM
・基礎的なプロンプティング技法 ・ビジネスでの応用(メール作成、アンケートの分析、スケジュールの作成、翻訳、ブレインストーミングなど) ・テキスト生成AIの苦手分野など |
詳細は、シラバスで確認してください。
>>GUGA「生成AIパスポート シラバス 8.03最新確定版」
試験期間
生成AIパスポート試験は、年3回開催されています。2024年3月5日時点での開催スケジュールは下記の通りです。
申込期間 | 受験期間 | |
第1回 | 10月1日0:00~1月31日23:59 | 2月1日0:00~2月29日23:59 |
第2回 | 2月1日0:00~5月31日23:59 | 6月1日0:00~6月30日23:59 |
第3回 | 6月1日0:00~9月30日23:59 | 10月1日0:00~10月31日23:59 |
受験期間中であれば、希望の時間で受験できます。年間スケジュールは変更される場合もあるため、申し込みの際は、必ず公式ホームページをご確認ください。
申し込み方法
個人受験の場合は、一般個人会員の登録後に受験申し込みの手続をして、受験料を支払います。会員登録と受験申し込みは、GUGAの公式ホームページから行えます。申し込み時に求められる情報は、氏名、メールアドレス、電話番号などです。
団体受験にも対応しており、法人会員登録をした企業・組織であれば、会員価格で受験できます。
生成AIパスポートの取得に向けたおすすめの講座
次に、生成AIパスポートの取得を目指す際におすすめの研修・講座を紹介します。
生成AIパスポート試験合格講座(LEC)
全5回、5時間の動画視聴で、生成AIパスポート試験の短期合格を目指します。資格取得の支援を行う予備校「LEC(株式会社東京リーガルマインド)」が提供する講座です。
要点を絞って、短期間で効率的に合格へと導く指導スタイルで、ビジネスの現場で役立つ実践的な内容が学べます。ベテラン講師がAIや機械学習についてわかりやすく解説するほか、法律やガイドラインなどの内容が充実している点も特長です。
DX人材育成や生成系AI導入時の社員研修、資格取得支援にも活用されています。
生成AIパスポート試験対策講座(Training One)
GUGA認定の生成AIパスポートの試験対策講座です。ITアウトソーシング事業やシステム開発事業を展開するCLINKS株式会社が提供しています。
2日間にわたり15時間かけて試験範囲を網羅するカリキュラムです。公式テキストの内容に沿って、重要なポイントを押さえながら進めます。各章の最後で習熟度を確認できることから、試験内容を効率的に学べます。
講座形式は、研修センターでの対面型とオンライン型から選択可能です。
>>生成AIパスポート試験対策講座(Training One)
シラバス対応研修動画(GUGA)
一般会員を除く、GUGA会員向けの動画講座です。GUGA認定講師が、約4時間かけて、生成AIパスポート試験と同等の学習内容を図やイラストなどを交えながら解説します。動画をすべて視聴し、チェックテストに合格すれば生成AIパスポート資格を取得できます。
学習で使用されるeラーニングシステムは、受講者と管理者の双方で学習の進捗情報を簡単に把握できる仕組みです。受講者側は効率的な学習が可能となり、管理者側では、進捗データのエクスポートができるため、詳細な分析も行えます。
生成AIパスポートの資格取得支援、従業員に対する生成系AIの学習環境の提供などに役立てられています。
まとめ
76.78%という累計合格率からもわかる通り、生成AIパスポートの難易度はそれほど高くありません。AI初心者の方でも、学習すれば十分に合格を目指せます。
ただし、AI関連の専門用語も出題されることから、AI初心者の方は事前の学習が必要です。「企業研修でAI活用の学習環境を整備したい」「短期合格を目指したい」というケースでは、対策講座の受講も検討してみると良いでしょう。
※この記事は、2024年9月時点の情報に基づいています。