AIを活用したFAQの作り方
カスタマーサクセス担当者にとって、顧客からの問い合わせ対応が業務負担となっている場合、FAQを整備することで効率化が図れます。
AIを活用したFAQの作り方には、ChatGPTを活用する方法と、専用のAIツールを活用する方法の2通りあります。それぞれ詳しく解説します。
ChatGPTを活用する
ChatGPTを活用してFAQを作成する方法と手順を解説します。
ChatGPTに参照情報を送る
ChatGPTに参照情報を送る方法は、問い合わせ履歴や関連情報を活用してFAQを作成するシンプルなアプローチです。
具体的な流れは次の通りです。
1. 問い合わせ対応履歴や関連するテキストデータを収集します。
2. 収集したデータをChatGPTに入力し、Q&Aペア(質問と回答の組み合わせ)を生成します。
3. 生成された内容を確認し、必要に応じて修正や追加を行います。
4. 整理したQ&AペアをFAQとして社内ポータルサイトなどで公開します。
関連記事:「ChatGPTに独自データを学習させる方法と注意点」
ChatGPT APIを自社システムに組み込む
ChatGPT APIを活用すると、問い合わせデータや社内で蓄積した情報をもとに、自社専用のチャットボットが顧客からの質問に回答する仕組みを作ることができます。
APIを利用することで、データを外部のサーバーに保存する必要がなくなり、顧客情報や問い合わせ内容を安全に管理できます。情報漏洩リスクを軽減しながらFAQを運用するのに効果的です。
ただし、APIを利用するにはプログラミングの知識が必要になる場合があります。
自社内に技術的なリソースが不足している場合は、次に紹介するAIツールの導入を検討しましょう。
FAQ生成の機能を搭載したAIツールを活用する
AIによるFAQの作成支援ツールはさまざまな企業が提供しています。おすすめのツールをいくつか紹介しますので、参考にしてみてください。
Knowledge Maker
Knowledge Makerは、メール・チャットデータ・マニュアル・製品カタログなどの情報からFAQを自動で生成するツールです。
自然言語処理技術を活用しているため、対話の意図を的確に理解し、正確なFAQを作成できるのが特徴です。言語的な誤りを訂正したり、言い換えや含意を正しく理解したりもできます。
金融、建設、製造、大学など幅広い業界で導入実績があります。
QAジェネレーター
QAジェネレーターは、対話型AI「Cognigy」と連携して、規約やマニュアルなどの構造化された文章からAIが自動的にFAQを生成するサービスです。独自の自然言語処理技術とオントロジー技術(※)を活用しており、精度の高い回答を導き出すことができます。
また、自動生成されたFAQは、Cognigyを利用することで、WebチャットやLINE、電話、Teamsなど複数のチャネルに展開することも可能です。
※オントロジー技術…コンピュータが人間の知識や言葉を理解し、推論を行うための技術のこと。
チャットボットhitobo
チャットボットhitoboは、生成AI技術を活用して社内のデータからFAQを自動生成し、正確な情報を提供するAIチャットボットです。
特に、FAQ作成やメンテナンスにかかる手間を軽減し、誤情報を防止するための機能を搭載しているのが特徴です。また、生成内容は一括登録前に必ずチェックされる仕組みになっており、正確性を高められます。
FAQ改善のための自動レコメンド機能も搭載されているため、定期的なメンテナンスにも役立つでしょう。
AIを活用して高品質なFAQを作成するコツ
カスタマーサクセスを担当している方にとって、顧客からの問い合わせに効率的に対応するためには、FAQの質を高めることが重要です。
ここでは、AIを活用して高品質なFAQを作成するためのコツを4つ解説します。
コツ1|AIに読み込ませる情報を精査する
FAQを効果的に作成するには、AIに読み込ませる情報の選定が重要です。問い合わせ頻度の高いカテゴリーを優先的に抽出し、過去の問い合わせ履歴や既存のマニュアルなど、関連する情報を充実させましょう。
また、AIが正確に内容を把握できるよう、データを整えること(テキストを校正するなど)も重要です。
コツ2|具体的かつ明確な質問をする
AIから正確な回答を得るためには、具体的で明確な質問を設定する必要があります。
質問文を作成する際には、5W1H(誰、何、いつ、どこ、なぜ、どのように)を意識することで、わかりやすい内容にしましょう。
また、専門用語を極力避け、簡潔な表現を使うことで、誰でも理解しやすいFAQが作成できます。
コツ3|問い合わせ内容の背景や文脈を共有する
AIに質問を伝える際、質問の背景や文脈を共有すると、より適切な回答を得ることができます。顧客が抱える具体的な課題や状況をAIに伝え、回答の精度を高めましょう。
また、「新人担当者向け」「管理職向け」といった役割を指定することで、対象者に合わせた内容を作成しやすくなります。
コツ4|回答の参照情報や解答例を含める
回答内容をさらに充実させるために、参照情報や解答例を加えることが効果的です。例えば、「関連する製品のリンク」や「トラブルシューティングの具体例」を含めることで、顧客がFAQを見ただけで問題を解決できる可能性が高まります。
このような追加情報は、FAQの利便性を大きく向上させます。
AIでFAQを作成する際の注意点
最後に、AIを活用したFAQ作成をする際の注意点を解説します。
ハルシネーションに気を付ける
AIが生成した回答の中には、事実に基づかない虚偽の情報(ハルシネーション)が含まれる場合があります。学習データが不適切(古い情報など)であったり、学習データに基づいて推測した情報を出力することが原因となります。
ハルシネーションをできるだけ防ぐためにも、導入・運用時には下記の点を意識しましょう。
・生成された回答が正確であるかどうか、必ず人がチェックする。
・偽情報や不正確な情報が含まれる可能性を前提に、回答を精査する。
・問い合わせ内容に対する正しい回答を提供するために、適切なデータを活用する。
こうしたプロセスを取り入れることで、顧客の信頼を損なうリスクを回避できます。
関連記事:「AIリスクに企業が講じるべき対策とは|生成系AIの利用・開発上のリスクを解説」
情報漏洩に注意する
FAQの作成に際しては、企業内部のデータや顧客情報を取り扱うことが多いため、情報漏洩を防ぐための対策が重要です。
例えば、下記の方法を検討すると良いでしょう。
・生成系AIへのアクセス権限を厳密に管理する。
・顧客情報を匿名化することで、特定されないようにする。
・セキュリティ対策を強化し、不正アクセスを防ぐ仕組みを整える。
これらの対策を徹底することで、顧客情報の保護と安全なFAQの運用が可能になります。
関連記事:「ChatGPTには情報漏洩のリスクがある?事例や対策を解説」
定期的にFAQのメンテナンスをする
FAQの回答は、製品やサービスの変更にともない更新が必要になる場合があります。定期的にメンテナンスを実施し、常に顧客にとって役立つFAQを提供しましょう。
メンテナンスは、下記のような取り組みが必要です。
・製品やサービスの情報が変更された場合は、FAQの内容を見直す。
・顧客のニーズに基づいて、新しい質問や回答を追加する。
・FAQ全体の整合性を確認し、最新の情報を反映させる。
まとめ
AIを活用したFAQの作成は、効率的かつ高品質な顧客対応を実現するための有力な手段です。適切なデータを精査し、明確な質問を作成し、背景情報を共有することで、FAQの完成度を高めることができます。
また、情報漏洩対策や定期的なメンテナンスを徹底することで、安全性と信頼性を確保できます。これらの取り組みを進めることで、顧客満足度の向上と業務負荷の軽減が期待できます。
顧客対応にお悩みの方は、本記事を参考にAIを活用したFAQの作成を進めてみてはいかがでしょうか。
※この記事は、2024年12月時点での情報です。