属人化する主な原因
属人化とは、特定の担当者に業務が集中し、その人以外では業務が円滑に進まない状態を指します。この状態は、業務効率や組織の柔軟性を損なう要因になり得ます。
まずは、属人化を引き起こす原因について詳しくみていきましょう。
原因1｜業務の専門性が高いから
業務に必要な専門知識や技術を短期間で習得することは困難です。新しい人材を育成するのに時間がかかるほど、特定の担当者に依存しやすくなります。
さらに、臨機応変に対応する必要がある業務の場合、手順をマニュアル化することが難しいケースがあります。このような状況では、特定の担当者の経験や暗黙知に頼ることになり、結果として他の人がその業務内容を把握しきれなくなることが多くあるのです。
原因2｜忙しすぎるから
担当者が日々の業務で忙しすぎると、自身の持つ知識やスキルを他の人に共有する時間が取れなくなります。特に、専門的な業務に携わる担当者ほどその傾向が顕著で、結果として知識が属人化するリスクが高まるのです。
また、業務が煩雑であればあるほど情報共有を怠りやすく、属人化がさらに進行する可能性があります。
原因3｜地位や立場を守りたいから
一部の担当者において、自分にしかできない仕事を抱えることで、自身の地位を守ろうとする心理が働くこともあります。このような状況では属人化が課題ととらえられず、情報やスキルの共有が進みません。
担当者自身が「自分が必要不可欠である」と考えてしまっているため、解決しにくいのも大きな課題です。
原因4｜情報共有の仕組みがないから
組織内で情報共有の仕組みが整っていない場合、業務に関する知識が属人化しやすくなります。例えば、ワークフローの設計が不十分であったり、チャットツールやグループウェアといったコミュニケーションツールが導入されていなかったりする場合が挙げられます。
さらに、組織文化として情報共有が重視されていなかったり、従業員の育成において共有の重要性が十分に伝わっていなかったりする場合も、属人化が進行する原因となります。
属人化を解消させる有効な施策5選
属人化の解消には、業務の整理からコミュニケーションの強化、ツールの導入まで、複数の視点でアプローチすることが重要です。
ここでは、効果的な5つの施策について詳しく解説します。
業務フローを可視化する
業務の属人化を解消するためにまずやるべきことは、業務フローの可視化です。一連の業務フローを把握し、関連する部署や担当者、やり取りされる情報（文書やデータなど）を洗い出しましょう。フローチャート化すると、全体像が分かりやすくなります。
次に、どの業務が特定の担当者に依存しているかを見極めましょう。必要に応じて、個々の業務を細かく分解するのも効果的です。属人化が顕著な業務を明確にすることは、解決を進める第一歩となります。
業務マニュアルを作成する
属人化している業務が高度な専門スキルを必要としないものであれば、業務マニュアルの作成で解決できる可能性があります。
誰でも理解できるシンプルな業務マニュアルを作成すれば、特定の担当者に頼らない体制を作ることができます。
マニュアルには、業務手順やノウハウ、注意点を具体的に記載しましょう。この際、業務手順のムダがないかを確認して、できる限り簡素化することも重要です。
また、マニュアルは更新を前提に作成し、常に最新の状態を維持しましょう。
関連記事：「業務プロセスを改善する4つのステップ｜施策例と成功のポイント」
権限や業務を分散させる
属人化の進行を防ぐためには、業務や権限を複数の人で分担する仕組みを整えることが必要です。特定の担当者に業務が集中しないようにすることで、エラーやミスの影響を最小限に抑えることができます。
さらに、メンバーそれぞれが責任を持つことで、チーム全体のモチベーション向上にもつながります。ただし、責任の所在があいまいにならないように注意が必要です。
情報共有を仕組み化する
情報共有を仕組み化して、オープンな社風を醸成することで、コミュケーションの機会が自然と増えます。ノウハウやスキルの共有が進みやすくなり、属人化の解消につながるでしょう。
具体的には、定期的なミーティングなどを設定して、情報共有を業務フローに組み込む方法が効果的です。毎週のチームミーティングや月次の全体会議などで重要な情報を一度に集約して共有すれば、漏れや誤解を防ぐことが可能です。ミーティングの内容は、後で振り返りやすいように議事録を残しておき、関係するメンバーに配布すると良いでしょう。
加えて、情報共有の目的や意義を全社員に教育することも重要です。なぜ情報を共有することが組織にとって重要なのか、どうすればより効果的に情報を共有できるのかを説明しましょう。「業務の効率化」「チームワークの強化」「意思決定の質向上」などの点を具体的に示すことで、社員が積極的に情報を共有したくなるような環境を構築できます。
ITツールを導入する
業務を通じて得られたノウハウや知識を属人化させないためには、ナレッジ・マネジメントの仕組みを構築することが重要です。ITツールを活用することで、これらのノウハウや知識を効率的に収集・蓄積・共有することが可能になります。
管理職が主導してナレッジの蓄積・活用を推進することで、属人化を解消するだけでなく、業務全体の生産性を向上させることができます。導入するツールは、使いやすさや業務との親和性を考慮して選定しましょう。
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属人化の解消を進める際の注意点・ポイント
属人化の解消を効率的に進めるためにも、ここで紹介する注意点やポイントを押さえておきましょう。
標準化すべき業務かはケースバイケースで考える
属人化している業務は業務効率や組織成長を妨げる要因と見られがちですが、すべての業務が必ずしも問題というわけではありません。属人化を解消すべきかどうかは、業務の性質によっても左右されます。
例えば、特定のスキルや経験が求められる専門的な業務では、その人ならではのノウハウが価値を生むケースも多くあります。こうした業務は、属人性をある程度許容し、その専門知識を活かす形で業務を設計するほうが効率的な場合もあるのです。
一方で、日常的なルーチン作業や、誰でもすぐに引き継げるべき業務については、属人化を解消し、標準化やマニュアル化を進めることが重要です。
また、属人化を解消するためのコストが利益や効率アップにつながるのかも慎重に検討しましょう。始めから属人化を全面的に否定するのではなく、業務の重要性や緊急度、影響範囲を見極め、柔軟に判断することが求められます。
継続的に評価して改善する
一度整備した業務フローやマニュアルも、時間の経過とともに新たな課題が出てくる可能性があります。そのため、定期的に評価を行い、問題点が浮かび上がった場合にはすぐに修正・改善を進めることが大切です。
評価と改善を繰り返すことで、属人化を防ぎながら効率的な業務運営を維持できます。
まとめ
属人化は、企業の生産性や柔軟性を低下させる場合があります。解決するためには、業務の可視化、マニュアル化、権限や業務の分散、ITツールの導入などの施策が有効です。
スキルやノウハウの共有を促し、業務を標準化することは、チーム全体の効率を高めるだけでなく組織全体の成長にもつながります。まずは業務の現状を把握し、小さな改善から始めてみてください。
※この記事は、2024年12月時点での情報です。