【国内企業のDX事例7選】自社でDXを推進するためのポイントも解説

近年、AIやビッグデータを活用したサービスが次々と登場し、さまざまな業界で従来のビジネスモデルに大きな変化がみられるようになりました。このような流れのなか、市場において競争力を培うために、各企業でDX推進の動きが高まりつつあります。 しかし、なかにはDXをどう進めていくべきか、どんな取り組みを行うべきか、模索している経営者やDX担当者は多いのではないでしょうか。 この記事では、DXの定義やDXの現状、自社でDXを進めていくうえで参考になる国内企業のDX事例をご紹介します。


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ビジネスの成長に欠かせないDXとは?

そもそもDXとは何を表すのでしょうか。DXの定義や現状、経済産業省の施策まで、DXについて解説します。

DXの定義

DXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称です。経済産業省では、DXを次のように定義づけています。

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。”

引用:「デジタルガバナンス・コード2.0」(経済産業省)

DXは、デジタル技術を活用して組織を変革させ、競争力を高めるまでがセットです。単なるツール導入やデータのデジタル化はDXとはいえません。

個別の業務だけでなく、組織を横断したデジタル化によりビジネスそのものを変えていくことをDXと定義づけています。

海外のDX事情と日本の現状

DXに成功した企業には、世界的に有名なAmazonやAppleなどがあります。

書籍のネット販売からスタートしたAmazonは、多様なジャンルの商品を扱うようにしただけでなく、AWSというクラウドサービスも展開するようになりました。

iPhoneシリーズなどで知られるAppleもDXに成功した企業のひとつです。Apple PayやApple Cardのような決済ビジネスをスタートさせたAppleは、番号やセキュリティコードなどの表示を取り除くことで、クレジットカードを持てなかった移民層などにもリーチするようになりました。

このように、世界のさまざまな企業では新規ビジネスの創出に役立てるなどDXをうまく取り入れています。グローバル競争が加速する現代において、ビジネスそのものを変革させるDXの重要性は増してきているといえるでしょう。

しかし、日本企業のDXは出遅れているのが現状です。DXの資産価値を捉えた対話がステークホルダーと十分に進められなかったり、デジタル化から一歩進んだ組織全体の変革に対応できる余裕がなかったりすることなどが原因とされます。

日本企業のDXを推進する経済産業省の施策

経済産業省では、日本企業のDX推進のため、企業のDXを評価するDX認定を行っています。デジタルガバナンス・コードに沿った取り組みを実施してDXのための体制整備ができた企業を認定するもので、2023年5月の時点で累計529の事業者がDX認定を受けました。

DX認定企業の中から、さらに優秀な企業を評価しようとするのが「DX銘柄」や「DX Selection」です。DX銘柄は優良な上場企業を、DX Selectionは優良な中堅・中小企業を、各業種や地域において模範になるものとして選定しています。

国内企業のDX事例7選

DX推進のためどのような取り組みができるのでしょうか。国内企業のDX事例について、DX銘柄からDXプラチナ企業2023-2025選定の3社、DXセレクション2023から4社(グランプリ、準グランプリ、審査員特別賞)の事例を取り上げます。

1.中外製薬株式会社(DX銘柄)

中外製薬株式会社は医薬品会社で、DX推進にあたり「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を策定しています。ビジョンの実現に向けて掲げている戦略が、デジタルを活用による革新的な新薬創出、バリューチェーン効率化、デジタル基盤の強化、革新的なサービスの提供です。

長い年月をかけても成功の可能性が低く膨大な研究開発費用がかかる新薬開発では、AIの創薬支援や画像解析技術などを用いて、コスト削減や成功率の向上などを図ってきました。

組織全体の改革のために、DXに積極的な経営トップとの懇談会、マネジャー層に向けたDX推進の課題解決のワークショップの開催、一般社員向けのリテラシー向上の勉強会なども行っています。

2.株式会社小松製作所(DX銘柄)

株式会社小松製作所は建設機械関連の会社です。同社では、将来的に建設現場の自動化、無人化、遠隔操作化、ソフト面では現場の施工のデジタル化やデジタルツインのニーズがより一層高まるものとして、DXを推進しています。

特に日本の多くの建設現場では、ICT機器を有していないものが使われていて、効率化が進まないとの課題があげられていました。

このような現場の課題解決を目指したのがDXスマートコンストラクション(コマツのICT建機×アプリ)です。各プロセスのデジタル化とデジタルツインを実現し、生産性向上や価値創出を支援しています。

3.トラスコ中山株式会社(DX銘柄)

トラスコ中山株式会社は、工場用副資材の卸売業者です。DXで圧倒的な種類の商品の在庫管理と即納を実現しています。

自動化できる仕事はすべて自動化するという方針のもと、AIによる自動見積り、AIによるデータ分析を利用した在庫管理、現場でよく使用されるツールをあらかじめ取り揃えておくサービスなどをデジタル技術により実現してきました。

さらに、国立大学や他社との連携により、リードタイムの最小化を図るプロジェクトを立ち上げ、さらなる利便性の向上にも力を入れています。

4.株式会社フジワラテクノアート(DX Selection)

株式会社フジワラテクノアートは、醸造食品の機械などを製造する会社です。ベテラン社員の多い同社は、社員のITリテラシーに課題がありました。そこで、デジタル化計画を策定し自分事にできるよう、DXの必要性を繰り返し社員に説明する時間を設けることに注力します。

さらに、21のシステム・ツールで全工程を変革させ、主要協力会社との取引もオンライン化することで、業務の効率化やミスの削減などを実現しました。

5.株式会社土屋合成(DX Selection)

株式会社土屋合成は、プラスチック製品製造業の会社です。当初は従業員の間でDX推進に抵抗があり、理解と納得してもらうまでに時間がかかったといいます。

従業員にDX推進に協力してもらうため、小さな改善活動から成功体験を積み上げ、経営者自らがデジタルを活用して従業員に共有する仕掛けでDX推進に成功しました。DX課を設置して若手をリーダーに据え、売上アップや効率的なものづくりを実現しています。

6.グランド印刷株式会社(DX Selection)

グランド印刷株式会社は、デジタルプリントを主体とした印刷会社です。システム導入に資金的な課題があったもののリース契約を活用してシステムの導入を決めました。

システム管理を1社に依存するとリスクもあるため、外部エンジニアと社内エンジニアで開発を進める体制を構築しています。DX推進により情報の共有が進んだことで個人の依存度が低下し、効率化や省力化、新規事業の発展につながりました。

7.有限会社ゼムケンサービス(DX Selection)

有限会社ゼムケンサービスは、女性社員の割合が高い特定建設業の会社です。同社では、ITリテラシーに個人差があり、DXビジョンの全社浸透に課題がありました。

この課題を解決していくべく、テレワークの実施やZoomでの昼礼など、社員全員がITツールに触れる機会を増やせるような取り組みを導入したところ、社員のITリテラシーを高めていくことに成功。それによりDXビジョンの浸透にもつながり、女性や若者、高齢者が働き続けられる環境が構築されました。人材育成やナレッジ共有のシステムサービスの導入も新規に進めてられています。

自社でDXを推進するためのポイント

企業のDX事例をもとに、自社でDXを推進するための3つのポイントを紹介します。

社内全体で進める体制を作る

DX推進のためには社内全体を巻き込む必要があります。トップ指導のもと、全社でDXを推進できる体制を構築していきましょう。

体制構築のためには、トップによるDX実現のための目標やビジョンの策定、社員への周知が必要です。また、社員がデジタルツールを活用できるよう、セミナーや講習会の開催などITリテラシーの教育を実施する必要もあります。

既存の仕組みを見直す

レガシーシステム(過去の技術や仕組みによるシステム)の見直しを行わずに新たなシステムを導入すると、システムが複雑化やブラックボックス化するおそれがあります。

既存のシステムを見直す場合は、旧システムから新システムへの移行のほかに、最新技術の組み込みや最新システムの作り替え、クラウドの活用などを検討していきましょう。

スモールスタートで始める

企業のなかには、社員のITリテラシーやIT人材育成に課題を抱えるところもあるでしょう。その場合、大きな変化でなくても、親しみやすい・使いやすいツールの導入など少しの変化からDXを推進していくことが大切です。

まずは自社の課題を解決できるツールの導入がおすすめです。

まとめ

DXに取り組む国内の優良企業の事例をいくつか紹介してきました。DX化を成功させるためには、既存の仕組みを見直し、トップが率先して全社員を巻き込むことが大切です。

とはいえ、企業によってはさまざまな課題を抱えており、早急にDX化を実現することは難しいものです。まずは、自社の課題を解決できるツールを導入するなどして、スモールスタートで取り組むことをおすすめします。

※この記事は、2023年11月時点での情報です。