システム開発の効率が下がる原因
システム開発の効率化を進めるには、初めに開発効率が下がる原因を把握することが大切です。原因がわからないことには、適切な改善策を講じることができません。
ここではシステム開発の効率低下を招く主な原因を紹介するため、当てはまるものがないかをチェックしてみましょう。
開発メンバーのスキルの問題
システム開発の効率が下がる要因のひとつが、開発に携わるメンバーのスキル不足です。システム開発には、下記のようなさまざまなスキルが求められます。
・プログラミングスキル
・論理的思考力
・問題解決力
これらのスキルが不足しているメンバーがいると、スムーズに開発が進みません。例えば、仕様書の理解に手間取って着手するまでに時間がかかる、プログラムに抜け漏れがありトラブルが発生するなどして、開発に遅れが生じやすくなるためです。
また、スキルそのものは保有しているものの、実践経験が少なく、思うように実力を発揮できない場合もあります。
そのほか、プロジェクトマネージャー(PM)のスキル不足により、スケジュール管理やメンバーの調整がうまくいかず効率が落ちるケースもあります。
開発工程の無駄
開発工程に無駄が多く、作業効率が落ちている場合もあります。開発工程の無駄の例として、下記のようなものがあげられます。
・要件定義が不十分で、開発途中で変更が必要になる
・各開発工程の担当者間で情報共有が不足しており、抜け漏れやミスが発生する
・社内承認フローが複雑で、承認までに時間がかかる
・工程管理がうまくできておらず、設計からやり直すことになる
・各工程の標準化が進んでいないため、無駄な作業が増える
・優先順位が共有されていないために、メインのタスクが後回しにされる
開発工程の無駄はさまざまな場面で生じるため、今一度工程を見直してみましょう。
属人化している
各工程の属人化も開発効率の低下を招きます。属人化とは、特定の従業員のみが業務内容や作業の流れ、必要な情報などを抱えている状態のことです。業務が属人化すると下記のような問題が生じやすくなり、業務全体が滞ります。
・担当者がいない日は問い合わせに対応できない
・進捗や状況を把握している従業員がおらず、トラブル発生時に原因を突き止める作業から始まる
システム開発では、開発担当者がそのままテストまで担当することも多いため、テスト工程は属人化が起こりやすい傾向にあります。
システム開発を効率化するアイデア5選
システム開発の効率が低下すると、予定通りに開発が進まず顧客に迷惑をかける可能性があります。
ここではシステム開発の効率化に役立つアイデアを5つ紹介するため、開発時の参考にしてみてください。
開発メンバーの教育に力を入れる
開発メンバーのスキル不足は業務効率に大きく影響するため、メンバーの教育を徹底してスキル向上を図りましょう。
短期的な対処法としては、プロジェクトに能力の高いメンバーを配置する方法があります。スキルが高いメンバーから直接指導を受けられるので、早期習熟を期待できます。この際、無理のない人員配置を心がけ、忙しいときでも育成対象者を放置しない環境を整えることが大切です。
長期的な対処法は、とにかく学習の機会を増やすことです。定期的に社内勉強会を開催する、eラーニングで隙間時間に学習できるようにするなど、さまざまな方法があります。より質の高い研修を実施したい場合は、外部研修を実施するのも良いでしょう。
ガイドラインを作成する
業務の属人化を防ぐためには、ガイドラインの作成が有効です。ガイドラインがあれば、システム開発が標準化されて従業員が共通認識のもとで開発にあたれるようになるため、開発がスムーズに進みやすくなります。要件定義やコーディング規定、ドキュメントの書式などに一定の基準を設ければ、品質向上にもつながります。
なお、ガイドラインはプロジェクトごとに作成することが大切です。一定の基準があるにしても、プロジェクトごとの要件が異なるためです。また、ガイドラインがあることを誰も知らないと作成した意味がなくなるので、完成したらメンバーに周知しましょう。
開発工程を整理する
開発工程に無駄が多いと、なかなか効率化が進みません。すべての開発工程を洗い出してみましょう。優先度・重要度が高い工程、低い工程、不要な工程と振り分けていけば、無駄な工程を整理できます。
また、工程ごとの作業時間を洗い出すことも重要です。多くの時間が取られている工程がある場合、必要に応じてタスクを分割すれば時間を短縮できる可能性があります。
情報共有ができるツールを導入する
開発メンバー間のコミュニケーションが不十分だと、余計な作業が発生しやすくなります。
特にコミュニケーションパスが増える大型案件ほど、コミュニケーションの質が重要です。良好なコミュニケーションが取れるかどうかは、メンバー間の信頼関係や課題の解像度に左右されます。
コミュニケーションを強化するには情報共有ツールの導入が有効です。ツールの導入でコミュニケーションパスを可視化することも可能です。
情報共有をスムーズにするために、場所にとらわれず参加できるオンライン会議を実施したり、円滑にメッセージをやり取りできるチャットアプリを利用したりするのも効果的です。
開発支援ツールを導入する
開発支援ツールの導入で業務効率化を実現できれば、エンジニアのスキル不足や人員不足を補えます。
最近は生成系AIを開発支援に活用する企業も増加中です。コーディング支援や自動テスト、運用・保守時のストレージの割り当て、要件定義や設計など、さまざまな領域で生成系AIが取り入れられています。実際に生成系AIの導入で生産性が向上した案件も存在します。
システム開発を効率化するステップ
システム開発の効率化に取り組むにあたって、何から始めるべきかわからない方もいるでしょう。そこで、システム開発の効率化を実現するための手順を紹介します。
ステップ1|システム効率化の問題を明確にする
まずは自社でシステム開発の効率を下げている原因を探ることから始めましょう。エンジニアが足りないのか、開発に携わるメンバーのスキルが不足しているのか、属人化している業務はないかなど、業務全体をチェックします。
特定の工程でヒューマンエラーが多発している、承認までに時間がかかっているなどのケースもあるので、多角的にチェックすることが重要です。
ステップ2|問題を解決する方法を検討する
問題が明確になったら、改善の4原則をベースに解決方法を検討しましょう。改善の4原則は、もともと製造現場で実施されていた業務改善の手法ですが、システム開発にも活用可能です。
意味 | 例 | |
排除 | 工程自体をなくす | ・報告書作成をなくす
・形骸化しているミスの確認作業を削減する |
結合 | 類似した複数の業務をまとめる | ・部署とチームで個別に出している日報をひとつにまとめる |
交換 | 順番や場所、手段を入れ替える | ・紙ベースの承認業務をデジタル化する
・古いツールを最新のものに入れ替える |
簡略化 | 無駄をそぎ落としシンプルにする | ・単純作業をツールで自動化する |
ステップ3|PDCAサイクルを回す
一度効率化に取り組んだら終わりではなく、PDCAサイクルを回して、効率化に向けて実施した施策の効果測定や振り返りを行うことも重要です。PDCAは業務改善に役立つフレームワークで、下記の単語の頭文字を取っています。
・Plan:計画
・Do:実行
・Check:評価
・Action:改善
システム開発の効率化に取り組み、どのような成果が得られたのかを評価し、改善点を洗い出して再び施策に取り組みます。このサイクルを継続することで取組の精度が向上していくため、組織の成長にもつながります。
まとめ
システム開発の効率が低下する原因は、開発メンバーのスキル不足や業務の属人化など企業によってさまざまです。原因が違えば解決方法も変わってくるため、まずは効率化を妨げている原因の洗い出しから始めましょう。
原因が把握できたら、それに応じた解決策を考えます。今回紹介した内容を参考に、システム開発の効率化に取り組んでみてはいかがでしょうか。