ChatGPTに自社データを学習させる3つの方法
ChatGPTに自社データを学習させる方法は3つあります。それぞれの方法や費用について紹介します。
専用ツール
・ノーコード開発が可能なツール
・ChatGPTと連携したAIツール
などの専用ツールを利用する方法もあります。
独自AIを構築するにはAIエンジニアに依頼する必要がありますが、外部の専用ツールを利用すれば高度な知識やスキルは必要ありません。
例えばノーコード開発が可能なツールでは学習用データをアップロードするだけで独自のAIチャットボットを作成できます。
またChatGPTと連携したAIツールではプロンプトエンジニアリングで学習させることが可能です。
・プロンプトに自社のテキストデータを入力する
・データファイルを添付する
などの方法で自社データを与えると、その情報に基づいた回答が得られます。
いずれもAPIを利用するため情報漏洩のリスクを低減できます。
エンベディング
エンベディングは簡単に説明すると学習データから必要な情報を抽出してプロンプトに追加する技術のことです。
ユーザーが入力したプロンプトを分析し、類似性や関連性の高い情報を独自データから抽出して追加することでより精度の高い回答を出力することが可能になります。
この際、ベクトルデータベースと呼ばれるものを活用します。データをベクトル化して保存や管理するデータベースシステムのことです。
エンベディング(=ベクトルデータベースを埋め込む)を実行するにはツールを活用するのが最も手軽です。
OpenAIが提供するエンベディングモデルのほか、LangChainやLlamaIndexと呼ばれるライブラリなどがあります。基本的にはPythonの知識が必要ですが、ツールによってはノーコードで実行できるものもあります。
エンベディングは自社データや専門知識などを学習させるのに向いておりChatGPTを業務利用したいときにおすすめの方法です。
エンベディングモデルのそれぞれの費用は下記の通りです。
※100万トークンあたり
モデル | 使用料金 |
text-embedding-3-small | $0.02 |
text-embedding-3-large | $0.13 |
ada v2 | $0.10 |
※引用:「Pricing」(OpenAI)
ファインチューニング
ファインチューニングは既に大規模データを学習したモデルにデータを追加する技術のことです。事前に学習していた大規模データの内容も調整できるため特定のタスクに特化させやすいのが特徴です。
ファインチューニングを行う際は大量の高品質なデータを用意してプログラミングする必要があります。
例えばテキストデータであれば
・不要な文字を除去する
・正規化する
画像データであれば
・サイズを統一する
・色彩を正規化する
などの作業が必要です。そのためリソースの確保と多くのコストが必要になる点は押さえておきましょう。
OpenAIが提供しているファインチューニングが可能なモデルの費用は下記の通りです。
※100万トークンあたり
モデル | トレーニング料金 | 入力料金 | 出力料金 |
GPT3.5 Turbo | $8.00 | $3.00 | $6.00 |
davinci-002 | $6.00 | $12.00 | $12.00 |
babbage-002 | $0.40 | $1.60 | $1.60 |
※引用:「Pricing」(OpenAI)
ChatGPTが学習できるデータ形式
プラグインや専用ツールを活用して自社データを読み込ませる際は下記のデータ形式を利用できます。
・PDF
・CSV
・URL
フ ァインチューニングやエンベディングで活用するデータベースはJSON形式などで作成できます。 JSONとは「JavaScript Object Notation」の略で、JavaScriptのオブジェクトの書き方に基づいたデータ記述言語のひとつです。
どちらの方法も対応するコードで情報を与える必要があるためプログラミングの知識やスキルが必要になります。
自社データを学習させたChatGPTの活用例
自社データを学習したChatGPTは下記のように活用できます。
学習方法 | 活用例 |
OpenAI API | ・カスタマーサポートができるAIチャットボットの開発
・メールなどの文章作成、資料作成 |
ファインチューニング | ・音声、画像生成
・デジタルクローンの作成 ・商品説明文の作成 |
エンベディング | ・カスタマーサポートができるAIチャットボットの開発
・画像検索 |
専用ツール | ・メールなどの文章作成、資料作成
・画像生成 ・社内ヘルプデスク |
自社のコンテンツ作成など業務で利用したい場合はOpenAI APIやエンベディング、専用ツールがおすすめです。
なおファインチューニングとエンベディングは学習のさせ方に違いがあります。
・エンベディング…データベースをChatGPTの学習データに外付けする
ファインチューニングが業界の一般的な知識の学習に向いている一方、エンベディングはよりニッチな専門知識や自社データの学習に向いています。
ChatGPTに自社データを学習させる際の注意点
ChatGPTに自社データを学習させる際は次の注意点を押さえておきましょう。
自社データを学習させる方法は公式で発表されていない
OpenAIは自社データを学習させる方法を公式で発表していません。公式な手順やガイドラインが存在しないため、自社データをChatGPTに学習させる際は自力で情報収集やテストをする必要があります。
特にファインチューニングやエンベディングなどは一定の知識や技術が必要なため、AI開発や機械学習に関する専門知識のある人材を確保することが必要です。
専門知識のある人材がいない場合、最も手軽なのは専用ツールを利用することでしょう。あらゆる業務を自動化したい企業や独自のアプリを開発したい企業におすすめです。
回答速度が遅くなる
自社データをChatGPTに学習させると回答の精度が高まる一方で、回答速度に影響を与える可能性があります。
特に大量の複雑なデータを学習させるようなケースでは自然処理に必要な時間が長くなってしまいます。
カスタマーサポートに活用するAIチャットボットなどを開発する際は回答速度も考慮することが重要です。
コストがかかる
外部の専用ツール以外の方法で自社データをChatGPTに学習させる際は追加コストがかかることを考慮しましょう。
独自の情報を追加したChatGPTは微調整が必要なため実装までに時間がかかるケースが多くあります。エンジニアを新たに確保するためのコストも必要になるかもしれません。
また日本語のテキストデータは英語と比べてトークン(※)量を消費しやすい点に注意が必要です。
英語は1単語=1トークンですが日本語はひらがな1文字=1~2トークン、漢字1文字2~3トークンで換算されます。
OpenAI APIやOpenAIが提供しているファインチューニングモデル、エンベディングモデルなどはトークン数が増えるほどコストがかかります。
ChatGPTに自社データを学習させる際は費用対効果を慎重に検討することが大切です。
※トークン…文字、単語、句読点、記号などテキストの基本単位を指す。
まとめ
ChatGPTに独自データを学習させるとより高精度な回答が可能になります。あらかじめ登録した情報に基づいて質問に回答するようにカスタマイズすれば顧客対応やヘルプデスク対応などにも活用できます。
今回解説した内容を参考に、自社の業務効率化や生産性の向上に役立てましょう。
※この記事は、2024年8月 時点の情報です。