AIの開発・導入にかかる費用
最初に、AIの開発・導入のプロセスを5つに分け、各段階で発生する費用の目安を整理します。
ステップ1|AI開発に向けた構想
ビジネス価値の創出を目的に、独自AIで解決すべきテーマや課題を抽出した上で、下記のような観点から具体性を高めていきます。
・AIシステムの構成の検討
・人員体制とスケジュール案の検討
・データの入手の可否
・費用対効果の試算
現状分析に基づいて課題やテーマを選定したら、独自AIの開発目的や計画、実施体制、費用対効果などを構想書にまとめます。
このステップではAI領域の専門的な知見が必要となるため、プロジェクトの円滑な推進を目的に、外部コンサルティングも活用することがあります。コンサルティングの費用相場は、40~200万円です。自社のみで構想を練る場合は、費用が発生しません。
ステップ2|AI化が実現できるか検証
次に実施するのが、実現可能性の検証です。AIの精度や性能はデータの質と量、アルゴリズムなどに左右されます。特にデータの種類や量によっては、AIの実現化が技術的に困難になる場合も少なくありません。
そこで検証段階では、モックアップという小規模なAIの仮モデルを開発して、下記のような点で、構想の実現可能性を総合的に判断します。
・データの量と質
・精度や性能
・費用対効果
・生成物に誤りがあった場合の影響
なお、検証の費用相場は40~100万円です。検証に使用するデータの収集や整理も必要な場合は、さらに費用がかかる可能性もあります。
ステップ3|プロトタイプ版AIの開発
検証を経て開発が決定した後は、仮決まりした大まかな仕様で「プロトタイプ」と呼ばれる試作品を作成し、テストと改良を繰り返します。
この段階で、必要なデータの収集やアルゴリズムの精度向上などを図ることにより、後工程での変更や手戻りによるコスト増加を抑止できます。
プロトタイプ版AIの開発にかかる費用相場は100万円~です。作成回数が増えれば、数百万円に膨れ上がるケースもみられます。そのため、カスタマイズして利用できるAIフレームワークも工数や費用の削減に活用されています。
ステップ4|AIモデルの本開発
プロトタイプを基にまとめた要件定義の内容に沿って、AIモデルの本開発を行います。本開発にかかる人月単価の相場は、80~250万円です。人月とは、エンジニア1人が1か月間で行う作業量の単位です。
規模が大きくなり、エンジニアが多く動員されるほど費用は増加します。また、複雑なアルゴリズムの実装や新たな機能の追加などでプロジェクトが難航すれば、開発期間も長引き、その分開発費用も加算されます。
ステップ5|システム開発
続いて、AIモデルのシステム開発を行います。具体的には、AIの操作性や実用性に影響するUI(ユーザーインターフェース)開発がその例です。
この段階でかかる費用は、人月単価の相場である60~200万円程度といわれています。とはいえ、開発規模や施策内容などで費用に大きく差が出るフェーズです。
さらに、AIシステムの運用段階に入ってから、AIの保守や精度、効果などをブラッシュアップするため、別途費用をかけてアップデートが行われるケースもあります。
AIツール別の開発・導入費用
ここでは、主なAIツールの開発・導入費用の目安を紹介します。
AIチャットボット
事前にインプットされたデータを基に、顧客からの質問に対して音声や文章で自動回答するシステムです。問い合わせ履歴の自動学習により、回答の精度を高められます。
導入費用の目安は、50~200万円ほどです。24時間365日対応が可能になるため、問い合わせ業務の効率化や省人化を実現したい企業におすすめです。
画像認識システム
AIが画像を識別して判断、解析するシステムで、次のような用途で利用されています。
・汚れや異物、欠陥などを検知するAI外観検査システム
・オフィスや工場などの入退管理システム
・店舗やイベントなどで使用される本人認証システム
画像認識システムの費用相場は、規模によって大きな差があります。小規模なシステムの相場は、20~80万円です。大規模なAI外観検査システムであれば、1,000〜2,000万円程度かかるといわれています。
需要予測システム
AIが過去の売上や在庫数などのデータから、商品やサービスの需要を予測するシステムです。生産計画や在庫の最適化、業務効率化などに役立てられています。開発費用は300〜600万円程度が目安です。
音声認識システム
認識した音声を解析し、テキストデータに変換するシステムで、議事録の自動作成、多言語の通訳・翻訳などの用途が一般的です。
開発費用の目安は100万円程度ですが、機能によってばらつきもみられます。議事録作成機能は費用負担が少なくて済む一方で、人間と話すように会話ができる対話型AIの開発には1,000万円以上の費用がかかります。
AIの開発・導入費用を抑える方法
AIの開発・導入の費用負担を軽減したい場合は、開発手法の工夫、既存のAIツールや補助金の活用が効果的です。
アジャイル開発を利用する
AIの開発は、要件や仕様の大枠のみを決めて、設計、実装、テストの小さなサイクルを回しながら進めるアジャイル開発が適しているといわれています。
アジャイル開発としばしば比較されるウォーターフォール開発では、計画通りに開発を進めていくため、大幅な変更への対応が困難です。その点、アジャイル開発なら急な仕様変更にも柔軟に対応でき、作業時間やコストのロスを抑えられます。
既存のAIツール導入も検討する
実現したい機能によっては、ゼロから独自AIを開発せずに、既存のAIツールで十分対応できる場合があります。開発費用がかからない分、AI導入のコストを大幅に抑えられる点がメリットです。
例えば、議事録の自動化やメールの自動生成、プレゼン資料の作成サポートなど、日常業務の効率化を目指すなら、エアスマAI(エアトリスマートAI)がおすすめです。機密情報の漏洩を防止する機能も備えた完全無料のフリープランも用意されています。
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補助金の活用
システム開発を対象とする下記のような補助金の利用も検討してみましょう。
IT導入補助金
小規模事業者・中小企業を対象に、DX推進や生産性向上を目的としたITツールの導入を支援する制度です。AI搭載のITツールの導入も適用され、申請後、審査を経て採択されれば補助金が支給されます。
ものづくり補助金
中小企業・小規模事業者などを対象に、新しい製品やサービスの開発、業務の省力化、生産性向上を目的とした設備投資を支援する制度です。省力化枠、製品・サービス高付加価値化枠などがあり、AI活用も想定されています。
AIの開発・導入の費用対効果を高めるポイント
費用対効果の高いAI開発・導入を実現するには、次の5つのポイントが重要です。
課題や目的を明確にする
初期段階で、解決すべき課題や達成したい目的などを明確にしておきましょう。
ゴールが見えないまま開発に取り掛かれば、かけた時間やコストが無駄になるリスクがあります。なぜなら、次のような理由で、AI導入の十分な成果を得られない可能性もあるからです。
・AI導入自体が目的化してしまう
・プロジェクトが迷走する
・必要な改善や軌道修正が行われない
また、効果測定の指標は、AI導入の目的に基づいて設定されます。そのため、目的を明確化することで、AI導入の評価が的確かつスムーズに行えます。
予算を算出しておく
AI開発の準備段階で予算を算出しておくことは、費用対効果を高める上で重要です。予期せぬ費用の増大を防ぐだけでなく、リソースの効率的な配分にも寄与します。
AI開発では、検証やプロトタイプで費用がかさむケースもあるため、もし予算を立てないままプロジェクトが進めば、想像以上に費用が増大するリスクもあるので注意が必要です。
複数社の見積もりを比較する
複数の開発会社から見積もりを取ることも、予算感の把握に役立ちます。AI開発の相場はあくまで目安に過ぎません。開発の規模や工数、人月単価などによっても変わり得るからです。
相場と照らし合わせつつ、各社の見積もりやサービスを十分に比較した上で、条件に合った適正な見積もりを提示した開発会社を選ぶことが基本です。
実績が豊富な開発会社に依頼する
相見積もりを取って開発会社を比較する際は、開発コストだけでなく、得意分野や実績などもあわせて検討しましょう。
依頼したい開発の実績が十分にあり、その分野が得意なエンジニアも多く在籍する開発会社であれば、プロジェクトが円滑に進み、コスト効率にも良い影響を与えます。
開発会社とこまめに連絡を取る
AI導入を成功させるための重要な鍵となるのが開発会社との連携です。
開発会社はAI関連の知識やスキルを豊富に有してはいるものの、自社の製品やサービス、業務内容には詳しくありません。開発会社に一任した結果、当初定めた目的の達成や課題の解決につながらないAIシステムができあがる可能性があります。
より良いAIシステムを作り上げるためにも、互いに密に連絡を取り合いながら、共同で開発する姿勢が欠かせません。
まとめ
AIの開発・導入にかかる費用は、開発の規模や搭載する機能などによって幅があります。費用を抑えるポイントとして、AI導入の目的の明確化をはじめ、開発の工夫や補助金制度の利用、自社の条件と合致した開発会社との密な連携などがあげられます。
「独自のAI開発は予算の確保が難しい……」という場合は、既存のAIツールの利用も検討してみましょう。生成系AIツール「エアスマAI(エアトリスマートAI)」は、セキュリティ面にも配慮しながら、簡単な操作で業務を効率化できるので、AI導入の始めの一歩におすすめです。
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※この記事は、2024年10月時点の情報に基づいています。